テーマ展「水を描く」作品紹介・第3回(‘ω‘)ノ

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今回ご紹介する作品は、高隆古(こうりゅうこ)の「大内春秋之図」(県指定文化財)。
復古やまと絵という様式で描かれたこの作品は、鮮やかな色彩が魅力的です!
では、この作品の水の描き方を見てみましょう。

高隆古「大内春秋之図」

この作品では、水を「色」によって表現しています。
淡い青色が均一に塗られていますが、水と言えば多くの人が想像する表現ではないでしょうか。

ところが、画面をしっかりと観察すると、水際の周辺に墨で線が入れられています。水面が風で凪ぐと水際には小さく波が立ちますが、それを表しているのです。「色」によって水を表現するだけでなく、さらに「線」によってひと工夫加えていることがわかります。

「大内春秋之図」(部分1)

「大内春秋之図」(部分2)


さて、この作品を見て不思議だな、と感じる部分はありませんか?
画面上方の山には桜が咲き、貴公子が小川を見ながら物思いにふけっている一方で、画面下部では、女性が紅葉をうっとりとした表情で見つめています。

おわかりのとおり、ここには二つの季節が一つの画面に描かれています。
このように、違う季節や時間を同じ画面に描くことは異時同図法(いじどうずほう)といい、日本美術ではよく見られる表現です。
中央に描かれた廊下は、二つの建物をつなぐと同時に、時間もつないでいます。砂子(金箔を細かく砕いたもの)を使った霞(かすみ)の効果もあり、二つの季節は違和感なく一つの画面に収められているのです。
大内とは皇居のことですが、雅な世界がぎゅっと凝縮された作品ですね。

好評開催中のテーマ展「水を描く」は9月8日(日曜日)までの開催です!残暑厳しい時期ですが、水の絵を観ながら博物館で涼んでみてはいかがでしょうか。

(人文課 瀬戸口)