学芸員とっておき講座「古い押し葉標本から新発見!」を行いました

ただいま当館では、自然系テーマ展「ジョージ・ルイスと武田久吉─明治日光の昆虫・植物研究の先人─」(2018年10月20日(土曜日)~2019年1月20日(日曜日))を開催しています(詳細:http://www.muse.pref.tochigi.lg.jp/exhibition/thema/2018lewisandhisayoshi/lewisandhisayoshi.html)。このテーマ展の関連行事として、12月16日に学芸員とっておき講座「古い押し葉標本から新発見!」が行われました。講師は星直斗学芸員(植物担当)が務めました。(もう一つの関連行事、「明治期日光のルイスの昆虫採集記」の様子については以下をご参照ください:http://www.muse.pref.tochigi.lg.jp/news/2018/10/post-482.html)

栃木県博には維管束植物標本がおよそ20万点収蔵されています。実はこの中には、今から100年以上遡る明治中頃から昭和中頃にかけて作成された、大変古い標本が1万点も含まれているのをご存知でしょうか?今回の講座は、貴重な古い標本から、栃木県内における植物の研究の歴史を紐解く、タイムトラベルのような気分を味わえる内容でした。

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下の写真は明治34年に女峰山で採集されたユキワリソウの標本です。ラベルには採集地、採集日や採集者が書かれており、ここからは無機質な情報しか得られません。しかし、調査の結果「明治の山旅」という本に、正にこの標本が採集された日付の採集風景が記されていることがわかりました。標本に情報が残っていたからこそ、この標本がどのような状況で採集されたのか、そして当時の研究者たちはどのような視点で植物を見つめていたのか推測することが可能になったのです。

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また、今は戦場ヶ原では見られないウサギギク、ムカゴソウ、テガタチドリの古い標本は、かつては戦場ヶ原にこれらが自生するような環境があったことを物語っているというお話もありました。

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古い押し葉標本に秘められた、栃木県の自然環境の変遷、そして武田久吉をはじめとする研究者の足取りを辿る興味深い講演でした。

(自然課 山本)