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2008年05月01日

考古部門番外編:韓国博物館・遺跡見学自主研修1

 3月19日から22日にかけて、3泊4日の日程で韓国に行ってきました(当然自費で)。今回は、新築なった国立中央博物館の見学を主として、国立扶余博物館で今話題の王興寺展の見学、日本玉文化研究会の海外会員である、崇実大学校博物館の崔恩珠先生にお会いすることが主な目的です。ほかにも、せっかくの機会なので精力的に足を延ばしてきました。
 3泊4日とはいえ、滞在したのは実質2.5日くらいなので、かなりの強行軍でした。しかしながら、韓国の博物館事情や発掘状況の一端をかいま見ることができ、今後の我々の博物館活動を考えるうえで非常に有益な研修となりました。
 分量が多いので、これから3回にわけて紹介したいと思います。


第1日目 ==(ソウル・国立中央博物館)==================
 7:00 マロニエ号でJR宇都宮駅前出発
      ・最近は都内周辺の混雑のため3時間以上の所要時間となることが多いと旅行代理店から
      言われたため、余裕を持って出発。
10:10 東京国際空港(成田)到着
12:35 第1ターミナル、25番搭乗口から乗機 大韓航空(KE)702便
15:02 ソウル国際空港(仁川)着陸
      ・前回訪韓時は金浦空港だったので、初めての仁川空港。多島海を埋め立てて建設された
      ことが、空から見るとよく分かる。アジアのハブ空港を目指しているだけあり、広大な敷地面
      積に驚く。しかし駐機している飛行機の種類は、成田の方がまだ多いという印象。
      両替、レート 100円=約980ウォン(サブプライムローンの影響でドル安円高のため)
      ・今回のツアー(といっても全日フリー)の参加者は、我々他に年配女性1人、カップル1組の
      みであった。ホテルまで送ってくれた韓国人ガイドさんに扶余に行くと入ったら不思議そうな
      顔をされた。やはり現在の韓国旅行といえば「冬ソナ」や「チャングム」関連の場所などをた
      ずねるのが主流で、「扶余に何を見に行くの」と逆に聞かれる始末である。

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空港からソウル市内に向かう途中の風景
 遠景の山の木はほとんどが松。日本でよく見かける杉は今回行ったところではほとんどはえていなかった。おかげで、成田を出るまで悩まされていた花粉症が、韓国滞在中はぴたりと治まっていた。杉花粉恐るべし、である。


16:55 梨泰院のクラウンホテル着
      ・梨泰院という住所にはなっているが、地下鉄の駅では「緑莎坪」駅のほうが近い。韓国へ移
      管された元米軍基地に沿って、徒歩で中央博物館へ向かう。所要約30分。

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中央博前庭(?)にて
 日本と韓国は時差がないため、6時頃でもこんなに明るい。この日は水曜日で午後9時まで開館していたので運良く入館できた。

18:00 国立中央博物館入館(2,000ウォン)
      ・地上6階、地下1階建て、高さ43m、全長404m、建物の床面積約13万㎡、世界で6番目の
      大きさを誇る博物館。入館料は210円程度と極めて良心的。韓国はどの国立博物館も入館
      料が安く設定されており、日本と比べて国民への文化教育に対する温度差を感じる。夕方
      だというのに入館者が多いのも頷ける。
       資料によると約16万点の遺物を所蔵し、そのうち約1万1000点を展示。展示室は中央部の
      吹き抜けを挟み3階構造。
      ◎考古館 - 旧石器・新石器・青銅器・初期鉄器・原三国・高句麗・百済・伽耶・新羅・渤海
      ◎歴史館 - ハングル・年表・金石文・文書・地図・王と国家・社会経済・伝統思想・対外交流
      ◎美術館Ⅰ - 書道・絵画・仏教絵画・木質工芸
      ◎寄贈館 - 寄贈文化財
      ◎美術館Ⅱ - 仏教彫刻・金属工芸・青磁・粉青沙器・白磁
      ◎アジア館 - インドネシア・中央アジア・中国・楽浪遺跡出土品・日本 考古・美術・歴史
       個人的な印象としては、東博の平成館の手法を強く意識しているような気がする。以前の
      博物館とは異なり、画像や映像が多用され、普及教育を強く意識しているようだ。デジタル
      携帯端末が整備されているのも、そういう考え方に基づいていると思われる。
       考古分野に限っては、使用方法などの復元に力を入れる一方で展示資料数が少なく個々
      の遺跡名が省略されるなど、研究者としては少し物足りない印象だった。
       部屋の数が多く、一回では見終わらないと判断し、考古館と美術館Ⅱの青磁・粉青沙器・
      白磁を中心に見学し、ミュージアムショップへ。紙製の組立模型が目についたので、岩寺洞
      遺跡の竪穴式住居を購入する。


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旧石器展示の一例
 本文中にも書いたが、この展示のように、資料名(器種名)はあっても遺跡名が記載されていない資料も多く、残念。もっともこの資料は、写真右下の石器に「全」というネーミングが見えるため、有名な全谷里遺跡のものであろう。


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天河石製玉類
 青銅器時代、黙谷里遺跡出土。九州以外の日本ではほとんど見かけない石材。


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高句麗の瓦
 日本の文様とはかなり異なり、いかにも大陸的だなという印象。


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百済の瓦
 扶余旧衙里遺跡出土。いわゆる蓮花文で、飛鳥時代の瓦によく似ており、日本の仏教文化が百済の影響のもとに展開されたことがよくわかる。本県でも那珂川町浄法寺廃寺や尾の草遺跡などでこれと似た瓦が出土している。

 
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白磁象嵌唐草文鉢
 韓国のやきものというと高麗青磁が有名だが、個人的にはこのような白磁や粉青沙器の方が好みである。


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ミュージアムショップで売られていた模型
 左下の竪穴住居を購入。2,000ウォン(200円)と非常に安いが、ちゃんと竪穴式になっており、内部構造がのぞけるようにも工夫されている。県博のショップでも取り扱ってほしいくらいの逸品。写真に写っている以外にもさまざまな種類のものがあった。
 

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中央博のライトアップ
 博物館を出たのは8時半。さすがに真暗である。


 この日は初日ということもあり、さすがに国立博しか回れませんでした。この後は梨泰院で夕食をとり、ホテルに戻りました。
 ということで、第1回はこれでおしまい。次回も乞うご期待。(考古:上野・森嶋)

投稿者 : 人文課 | カテゴリー : 考古部門活動記録